『怪談えほん』は、ミステリーやホラー、幻想小説の人気作家たちが集結し、それぞれの独自の視点で恐怖の世界を描き出しています。
そのストーリーは、こどもに見せるべきか悩むほど、不気味さや狂気を含んだ大人向け作品がたくさん。
このシリーズはNHK Eテレの「怖い絵本」として朗読アニメ化され、視覚と聴覚で深まる恐怖体験が楽しめます。
子供から大人まで、心からゾクっとするこの絵本の魅力を探ってみましょう。
『怪談えほん』シリーズとは?
「怪談えほん」シリーズは、岩崎書店が刊行する怖い絵本のレーベルです。日本を代表するホラーやミステリー作家たちが集まり、それぞれの個性的なホラーストーリーを執筆しています。イラストは実力派の画家たちが手掛けています。
緻密な文章と美しい絵が見事に融合し、唯一無二の世界観が生み出されています。このシリーズは、子どもたちに想像力を育むとともに、不安や恐怖に立ち向かう力を養うことを目的としています。
2011年に始まったこの企画は、2024年現在で3期にわたって刊行されており、今後の展開にも大きな期待が寄せられています。
怪談えほん〈第1期〉
宮部みゆき『悪い本』
著者 | 宮部みゆき |
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絵 | 吉田 尚令 |
発売日 | 2011/10/7 |
ページ | 32ページ |
宮部みゆき氏は『理由』(直木賞受賞)、『ソロモンの偽証』などを代表作にもつミステリー小説家です。
この世の「悪いこと」をすべて知っている「悪い本」。
この悪い本、あなたはいつか絶対ほしくなります。
読者に悪とは何か問いかけてくる本で、余韻の残る怖さが、あとひく作品です。
くまのぬいぐるみや人形たちが不穏さを演出しています
皆川博子 『マイマイとナイナイ』
著者 | 皆川 博子 |
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絵 | 宇野亜喜良 |
発売日 | 2011/10/7 |
ページ | 32ページ |
『死の泉』(吉川英治文学賞) 、『開かせていただき光栄です』(本格ミステリ大賞)を代表作にもつ、幻想小説でお馴染みの皆川博子氏の作品です。
マイマイは、小さな弟・ナイナイをみつけました。ナイナイは胡桃の殻に入ってしまうほど、体が小さいのです。
マイマイの壊れた右目にナイナイを入れて、目を開けると不思議な世界が見えてきます。
皆川博子氏のえがく狂気に満ちた幻想絵本です。
大人が好む美しいけれど、どこか異質な物語
京極夏彦『いるのいないの』
著者 | 京極夏彦 |
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絵 | 町田尚子 |
発売日 | 2012/1/27 |
ページ | 32ページ |
『百鬼夜行』シリーズや『巷説百物語』シリーズを代表作にもつホラー・ミステリー作家・京極夏彦の作品。
祖母の住む古い日本家屋でしばらく生活することになった「ぼく」。
家のいたるところにある暗がり。その闇の空間に誰かいるような気がします。
梁の上には一体何が隠れているのでしょうか。
シリーズNo.1の人気作品。衝撃のラストに最後まで見逃せません。
恒川光太郎『ゆうれいのまち』
著者 | 恒川光太郎 |
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絵 | 大畑いくの |
発売日 | 2012/2/29 |
ページ | 32ページ |
恒川光太郎は『夜市』(日本ホラー小説大賞)、『雷の季節の終わりに』『秋の牢獄』を代表作にもつ、幻想的なホラー作品を手がける小説家です。
ある日、ぼくは友達に「ゆうれいのまち」に遊びに行こう、と誘われました
ゆうれいたちは、ぼくと友達の姿を見つけて追いかけてきます。
そして、ぼくだけが「ゆうれいのまち」に取り残されてしまい……?
友達は、本当に「ぼく」の友達だったのかな…?
加門七海『ちょうつがいきいきい』
ホラー作家で、オカルトルポを得意とする加門 七海の作品です。著者の代表作は、『祝山』『怪のはなし』『怪談徒然草』『心霊づきあい』など。
著者 | 加門 七海 |
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絵 | 軽部武宏 |
発売日 | 2012/3/15 |
ページ | 32ページ |
部屋のドアの隙間からきいきいと音がします。よく見ると、隙間にはおばけたちが挟まって「いたい」と泣いています。
あらゆる隙間からきいきい音が聞こえてきます。
普段は気にならないような、身近な音に注目したホラー絵本。
注意していきいてみると、いろんな「きいきい」が日常にあふれていますね
怪談えほん〈第2期〉
恩田陸『かがみのなか』
『六番目の小夜子』でデビューし、『夜のピクニック』(吉川英治文学新人賞、本屋大賞)など数々の人気・話題作を生み出した恩田陸氏の作品です。
著者 | 恩田陸 |
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絵 | 樋口佳絵 |
発売日 | 2014/7/18 |
ページ | 32ページ |
家や学校など、鏡は至る所に溢れています。
鏡の中はいつも「あべこべ」ですが、時々間違えるようです。
誰でも感じたことのある鏡の恐怖に着目した作品で、鏡を見るたびにゾッとする体験を思い出すでしょう。
深淵を覗く時、深淵もまたこちらを見つめているのだ
岩井志麻子『おんなのしろいあし』
タレントとしても活躍する岩井志麻子氏は、代表作に『ぼっけえ、きょうてえ』(山本周五郎賞)などがあります。
著者 | 岩井志麻子 |
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絵 | 寺門 孝之 |
発売日 | 2014/8/8 |
ページ | 32ページ |
ぼくはお化けが怖くありません。心霊スポットとして知られている学校の倉庫に1人で入っていきました。
すると天井からぶら下がる白い女の足を見つけます。
学校を出ても、ぺたぺたと気配がついてくるような気がして…。
ホラー作品を見た後の、怖い気配がついて回る感覚がずっと続くような作品です
綾辻行人『くうきにんげん』
著者 | 綾辻行人 |
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絵 | 牧野 千穂 |
発売日 | 2015/9/18 |
ページ | 32ページ |
『十角館の殺人』で作家デビューし、『Another』など、新本格ミステリを流行させた綾辻行人の作品です。
誰も気づいていないけど、たくさんいる「くうきにんげん」。
小さな隙間から家の中に入り込んで、人を「くうきにんげん」に変えてしまいます。
「くうきにんげん」に変えられたひとは、空気みたいになって世界から消えてしまうのです。
かわいいウサギのイラストとは対照的に、「くうきにんげん」が現れるのではないか怯えてしまう
小野不由美『はこ』
著者 | 小野不由美 |
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絵 | nakaban |
発売日 | 2015/5/21 |
ページ | 32ページ |
『十二国記』や『ゴーストハント』(悪霊シリーズ)で知られる、女性作家・小野不由美氏の作品。
本作では、ペットや物が「はこ」に入れると次々に消えてしまうという物語が描かれています。
女の子は不思議な音がする「はこ」の中身と、消えていくものたちに思いを馳せます。
親がいなくなってしまうかもしれないという、子供のころに感じたことのある不安が形になった作品です
怪談えほん〈第3期〉
夢枕獏『おめん』
著者 | 夢枕獏 |
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絵 | 辻川 奈美 |
発売日 | 2021/5/19 |
ページ | 32ページ |
安倍晴明を主役とした『陰陽師』シリーズや、『大帝の剣シリーズ』、『餓狼伝シリーズ』を代表作にもつ、人気作家・夢枕獏の作品です。
この「おめん」を被れば、誰でも呪うことができます。
嫌いな子、綺麗な子、いじめっ子たちを呪っていく主人公。
気づいた時には、「おめん」が取れなくなってしまい……?
誰にでもある心の闇を描き出した本作。シリーズの中で、目を逸らしたくなる本NO.1
佐野史郎『まどのそと』
著者 | 佐野 史郎 |
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絵 | ハダ タカヒト |
発売日 | 2019/7/13 |
ページ | 32ページ |
佐野史郎氏は主に俳優として活動し、映画監督や作家などでも活躍しています。
かたかた…かたかたかた…。窓の外では音がなり続けています。
外の世界はどうなっているのでしょうか。
みたい、けれど怖い、でもみたい…。
至る所に伏線が散りばめられており、絵本でありながら考察を楽しめる1作です。
イラストや文章から深読みすることで、物語の解釈の幅が広がります
有栖川有栖『おろしてください』
著者 | 有栖川有栖 |
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絵 | 市川 友章 |
発売日 | 2020/1/17 |
ページ | 32ページ |
有栖川有栖は、日本の人気ミステリー作家で、「学生アリスシリーズ」や「作家アリスシリーズ」を手掛けています。
裏山で遊んでいた僕は、見知らぬ電車の駅に迷い混んでしまいました。
やってきた電車に乗ってみると、そこは怪物や幽霊など人ならざるモノたちが利用する電車でした。
僕は無事におうちへ帰れるのでしょうか……?
きさらぎ駅のような作品。比良坂駅にもご用心!
あさのあつこ『いただきます。ごちそうさま。』
著者 | あさの あつこ |
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絵 | 加藤休ミ |
発売日 | 2021/1/20 |
ページ | 32ページ |
『バッテリー』や『NO.6』など児童向け文庫で活躍する作家・あさのあつこ氏の作品です。
食べるのが大好きな、食いしん坊なぼく。
ぼくはなんでもたべます。
すると、ぼくの体は次第に大きくなっていきます。
食べるの大好きだけど、ほどほどにしておこう……。
怪談えほんコンテスト〈大賞受賞作〉
となり そういち『こっちをみてる。』
著者 | となり そうしち |
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絵 | 伊藤潤二 |
発売日 | 2024/2/16 |
ページ | 32ページ |
2018年に開催された「怪談えほんコンテスト」で、一般公募から大賞に選ばれた作品です。
世界のいたるところに顔があり、ぼくだけがその顔に気づいています。
顔は次第にぼくだけを見つめるようになり……。
視線恐怖症の読者には耐えられない、想像すると叫びたくなるほどの恐怖体験です。
どこにいても感じる視線の恐怖は、想像するだけで最恐です
一流作家のおくるホラー絵本で恐怖体験
『怪談えほん』シリーズは、ミステリーやホラーの著名作家たちが手掛けた恐怖の絵本です。
それぞれの作家が描く怖い物語と幻想的なイラストが絶妙に組み合わさり、独特の怪談の世界が広がっています。
こどもに読ませたいかどうかは賛否両論あるようです。大人も楽しめる本格的なホラー体験を、一度手に取ってその魅力を感じてみてください。