【読書感想】続編『魔法使いのお留守番 ヒムカ国編』:魔女を倒すまでの空白期間の物語

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【読書感想】続編『魔法使いのお留守番 ヒムカ国編』:魔女を倒すまでの空白期間の物語

こちらの記事は一部ネタバレを含みますので、閲覧に注意してください。

目次

『魔法使いのお留守番 ヒムカ国編』の基本情報

タイトル魔法使いのお留守番 ヒムカ国編
著者白洲 梓
装画kokuno
出版社集英社
ジャンル小説
ページ文庫判/416ページ
発売日2025年2月19日

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『魔法使いのお留守番 ヒムカ国編』のあらすじ

世界の秘密を巡る壮絶な戦いのあと、終島に戻ってきたヒマワリ。ある目的のため、すべての魔法を無効化する体質の青年・モチヅキを尋ねるべく、ヒムカ国へ向かおうとするが、高熱を出し臥せってしまう。そこへ大魔法使いシロガネへの面会を求め、大きな剣を携えた武人が訪れる。
いつものように追い返そうとする竜のクロと古代兵器のアオだったが、「誰にも抜けない剣を抜いて欲しい」という武人の頼みにヒマワリが興味を示し……。
前作『魔法使いのお留守番』で語られなかったその後を描く、待望の続編始動!

引用:集英社:魔法使いのお留守番 ヒムカ国編

『魔法使いのお留守番 ヒムカ国編』ジャンル、カテゴリー

  • ファンタジー
  • ヒューマンドラマ
  • 童話
  • キャラクター文庫
  • ライトノベル

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『魔法使いのお留守番 ヒムカ国編』の感想(ネタバレなし)

本作は、本編の上下巻で語りきれなかった空白の期間を埋める物語だ。

暁祭の後、「ヒマワリたち一行がどのようにして魔法をなくすことに成功したのか」という解決編を語る。本編でさらっとしか触れられなかった結末が丁寧に描かれていて、とても嬉しく思う。

また、ヒマワリが記憶をなくす前のスバルだった頃、国を追われる原因となった「呪われた王子」としての予言に立ち向かっていく。

彼の出身国であるヒムカ国との因縁に迫る展開が大きな見どころ。

さらに、ヒマワリ、クロ、アオの3人のキャラクターの追加エピソードもあり、それぞれの視点がより鮮明に感じられたのも魅力的だった。

物語全体として、「眠り姫」や「アーサー王伝説」といったおとぎ話を下地にしながらも、現代のジュブナイル向けにオタク心をくすぐるストーリーになっている。そのバランスの良さに惹き込まれる。

童話のあるある要素を押さえつつ、独自の展開を見せる世界観に、次回作への期待がますます高まる。

『魔法使いのお留守番 ヒムカ国編』の感想(ネタバレあり)

第1話 抜けない剣

本作の冒頭は、シロガネとして生きていた頃の3人の幸せなひと時から始まる。

その温かさが物語の核心にある喪失の痛みを際立たせている。

シロガネを亡くしてからのアオとクロの様子は、まるで『カードキャプターさくら』におけるクロウとその守護者たちの関係のようだ。クロウの死後も次の主を待ち続けるケロちゃんとユエの姿が重なり、彼らの悲しみと忠誠心が胸に迫る。

本編でヒマワリは、自分がシロガネの生まれ変わりであることを自覚したが、本作ではまだクロとアオにはその事実を伝えていない。

シロガネの帰りを切望する2人に、いつこの真実を伝えるのかといった、静かな緊張感が、物語の展開をより一層引き締めていた。

第1話では、「何でも斬れるが決して抜けない剣」が登場。アーサー王伝説のエクスカリバーを彷彿とさせる。

特別な魔法によって封じられたこの剣を、ヒマワリは魔法を解くことを条件に借り受け、キーアイテムとして手にすることに。伝説の剣の要素を取り入れたファンタジーらしい展開に心が躍る。

そして、魔女を倒す力を持つかもしれないモチヅキを探すため、ヒマワリは再び島を離れ、新たな旅へでる。

第2話 美しい夢

今回の小説のパートの中で、最も心に響いたのがこの章だ。

本編のキャラクターであるクロの姉・カンナやその婚約者ホヅミ、シロガネの親友マホロが登場し、まるでファンサービスのような嬉しい再会の場面が描かれている。

ヒマワリがシロガネだった頃、クロがカグラだった頃のもう戻れない過去に思いを馳せる時間は、儚くも美しい。

この理想の世界にずっと浸っていたい、いっそすべてを投げ出してこの夢の中で果ててしまってもいい――そんな甘美な誘惑に抗うことの難しさが、ひしひしと伝わってくる。

私ならこの呪縛から逃れることができるだろうか、と自問するほどに、切なく胸を締めつけられる場面だった。

この展開は、『鬼滅の刃』の無限列車編で炭治郎が見た夢を思い出した。家族が生きていて、辛い現実がまるで嘘だったかのような幻の世界。

その甘い誘惑を断ち切り、自ら現実へと戻る炭治郎の強さには、改めて尊敬の念を抱かざるを得ない。

ヒマワリとクロもまた、過去の夢に別れを告げ、辛い現実に立ち向かっていく――その決意が感じられる展開に胸が熱くなる。

さらに、ツツジとマホロが登場したことも嬉しいサプライズだった。

本編で特にお気に入りだったツツジの淡い恋のエピソードを思い出し、再びクロとの絡みを見られたことが嬉しい。

過去と決別しながらも、その後悔や寂しさ、懐かしさを胸に刻んで進んでいくヒマワリとクロの旅路に、これからも目が離せない。

第3話 眠り姫

行方不明のモチヅキを探すヒマワリ一行が、魔法で眠ってしまった超絶美人のキサラ姫と出会う。どうやって姫を起こすのか、まるでおとぎ話のような展開に胸が躍る。

お姫様の呪いを解く方法は、王子からのキスが定番だ。ディズニーならキスか真実の愛で解けていただろう。

この章では新たに妖精の存在が登場し、『伯爵と妖精』や『シュガーアップル・フェアリーテイル』にハマってきた私としては、まさにツボな展開。妖精ならではの気まぐれな振る舞いや神秘的な雰囲気が、物語の世界感に奥行きを与えている。

今後、他の神話の生き物や怪物が登場するのかと思うと、期待が高まりまる。

そして、妖精の気まぐれによって目を覚ましたキサラ姫。魅了といったスキルを生まれつき持っている彼女のキャラクターがまた強烈。

今まで出会ったすべての人に愛されてきたという自覚のある美少女だ。周囲の好意を疑うことなく、それを当然のように受け入れているそのメンタルの強さには、むしろ憧れすら覚える。

第4話 封印

シロガネとスバルの母・トキワの繋がりが語られるエピソード。

トキワにとってシロガネは命の恩人であり、ヒマワリ(本名スバル。シロガネの生まれ変わり)の母でもある。スバルが生まれ変わる前から、不思議な縁は結ばれていたのか。

そして、ついに一行が探し求めたモチヅキと再会。

兄に殺されかけ、世界を放浪していたモチヅキは、自立し逞しくなっている。おばあちゃんの知恵だけでなく、実戦で培われた強さを兼ね備え、以前とは比べものにならないほど大人の男性になっている姿に驚いた。

やはりモチヅキは魔法を無効化する力を持っているようで、抜けない剣の魔法を解除してしまう。『マッシュル-MASHLE-』や『杖と剣のウィストリア』など、最近漫画・アニメ業界で流行りのの魔力を持たない主人公タイプだ。

モチヅキも他の男性たちと同様に、キサラ姫の魅力に夢中になっている。そんな中で、皆のハートが一斉に集まるキサラ姫が、クロに恋をしているという点が、キャラクターの関係に面白みを与えている。

クロに夢中のキサラと、それを阻止したいヒマワリの3人のコミカルな攻防は見ていて飽きない。

さらに、キサラを狙う暗殺者の正体が、ヒムカ国から派遣された宮廷魔法使いだと判明。

ここから本格的にヒムカ国の勢力争いに巻き込まれていく展開に。

第5話 呪われた王子

本章では、偽の予言によってスバルに「呪われた王子」の烙印を押した、東の魔法使い・オグリとの対峙が描かれた。

3人の人生を背負うことになったヒマワリは、スバルとしての運命と向き合いながら、国の勢力争いや陰謀に巻き込まれていく。

特に印象的だったのは、瀕死のヒマワリにクロが血を飲ませるシーン。一族を滅ぼす原因にもなった、回復効果のあるドラゴンの血を使う決断には、クロの覚悟がにじんでいて、ヒマワリが彼にとってどれほど大きな存在なのかが伝わってきた。

そして、本作を通してスバルとしての問題がついに解決。ヒムカ国でのスバルの人生は終わりを迎え、「呪われた王子」は倒されたことになった。彼の過去に決着がついたことで、物語は本格的に魔女退治へと進んでいく。

最後、島に戻ったヒマワリがクロとアオに「シロガネの生まれ変わり」であることを明かす場面では、思わず涙が溢れた。

シロガネの帰りをずっと待っていた2人にとって、ヒマワリはシロガネそのものでなくても、かけがえのない存在だったのだと感じられ、胸が熱くなる。

次回以降、いよいよ本格的に魔女との戦いが始まることを思うと、一行の勇士から目が離せない。物語がどのように展開していくのか、ますます楽しみである。

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