『宝石商リチャード氏の謎鑑定』シリーズの基本情報
| シリーズ名 | 宝石商リチャード氏の謎鑑定 |
|---|---|
| 著者 | 辻村七子 |
| 絵 | 雪広うたこ |
| 出版社 | 集英社オレンジ文庫 |
| 発行日 | 2015年〜2025年 |
| ジャンル | ミステリー ヒューマンドラマ ジュブナイル |
| 巻数 | 本編全15巻 短編集2巻 |

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『宝石商リチャード氏の謎鑑定』シリーズの感想(ネタバレあり)
『宝石商リチャード氏の謎鑑定』シリーズ祝完結!
ついに『宝石商リチャード氏の謎鑑定』が完結しました。
アニメ化前からハマり、新刊が出るたびに心待ちにしていた大好きなシリーズです。
前作14巻目『再開のインコンパラブル』で「次が最終巻」と知ってからは、早く読みたいような、でも終わってほしくないような…そんな葛藤をずっと抱えていました。大好きな作品を見届けるのは嬉しさと同時に、どうしても寂しさがつきまとうものですね。
物語は大きく3部構成。10年の歩みをざっくりまとめると、次のとおりです。
麗しの宝石商リチャードと、大学生の正義の出会い。そして店主とアルバイトとして、銀座のエトランジェを切り盛りした第1部。
公務員試験に落ち、見習い宝石商になった正義。リチャードの過去とクレアモント家にまつわる因縁に巻き込まれながら、世界中を飛び回った第2部。
そして、腹違いの弟・みのるくんが加わり、横浜での男3人の共同生活を描いた第3部。
第1部:銀座エトランジェの思い出
酔っ払いに絡まれていたリチャードを助けたことがきっかけに、正義は銀座にある宝石店でアルバイトをすることになります。そこへ持ち込まれる宝石と、人々の抱える謎や事情。宝石にまつわるミステリーを通して心が救われていく、静かで美しい連作短編の数々が印象的でした。
次第に仕事以上の深いつながりになっていくリチャードと正義。やがてお互いの家の事情や人間関係にまで踏み込んでいく。
シリーズ全体を通しても、やっぱり一番好きなのはこの第1部です。アニメ化されたのもここまでですね。
6巻の『転生のタンザナイト』は、特に何度も読み返した大切なエピソード。正義というキャラクターの核になる物語で、挫折から立ち上がる姿に何度も勇気をもらいました。一人で問題を抱え込んだ正義くんに対して、リチャードや家族・友人が寄り添います。そうして少しずつ正義くんが救われていくところが、お気に入りです。
さらに義父・中田さんの存在が本当に素晴らしい。シリーズ全体を通して、正義の支えであり続けた頼もしい父親像でした。
中田さんが贈ったタンザナイトのペンダントは最終巻にも登場し、正義の心の拠り所であり続けます。
実は私自身の誕生石もタンザナイト。
大学卒業のとき、偶然両親からタンザナイトのペンダントを贈られ、「正義くんと同じだ!」と喜んだのを覚えています。今でも大切な宝物です。
第2部:世界を旅した日々
スリランカ、カリブ海のクルーズ旅行、フランス、日本、香港。第2部は物語が急にワールドワイドに広がり、胸が高鳴る冒険が続きました。
1部は宝石にまつわる事件が描かれる一方で、2部はキャラクターの内面に深く迫る長編物語へと変化。クレアモント家の因縁と、リチャードの過去が明らかになり、彼の元同僚ヴィンスや教え子オクタヴィアとの出会い。
正義は世界を回る中で、日本では気づけなかった「常識の外側の世界」を目の当たりにします。セクシャルハラスメント、ヨーロッパにおけるアジア人差別、女性蔑視や宗教騒動……。
帰国後、正義が日本の当たり前に違和感を覚えるシーンは特に印象深いものでした。
「珊瑚の邂逅」では、正義が将来とリチャードとの関係を見つめ直し、物語は大きな転機を迎えます。
私自身も当時人生の節目にいたので、共感しながら読んでいました。
第2部は二人の間に「友達以上恋人未満」の空気がずっと漂っていて、このままブロマンスで終わるのかな……と思っていた時期でもあります。
第2部は二人と一緒に旅しているような気持ちになりました。いつか二人が暮らしたスリランカに行ってみたいなー。
第3部:みのるくんのまなざし
第3部は、正義くんの弟・みのるくん視点で描かれる3人の共同生活。気分障害の母の治療中、正義・リチャード・みのるの「男3人暮らし」が始まります。
主人公が中学生になったことで、児童文学のような雰囲気が加わり、常識や当たり前とされている事柄を疑う視線がいっそう深く描かれていました。
ただし、正義とリチャード視点の物語ももっと読みたかったのが正直なところ。それでも、みのるくんが2人と周囲の人々に触れ、自分自身の軸を育てていく姿は胸を打ちます。
そして驚いたのは、正義くんの驚異的な成長!
大学生時代とのギャップが大きすぎて、正直びっくりしました。
彼は努力し、リチャードの隣に立てる存在へと成長していったんだなと感慨深くなります。
自立した社会人になっているし、何ヶ国語も操り、立ち居振る舞いも洗練されていて、イケメン度とカリスマ度がアップしている!!みのるくんから見ると、スマートな大人すぎます……。こんなお兄ちゃんかっこよすぎますね。
14巻目で二人の関係がはっきりし、そして最終巻ではついに結婚!友人と恋人の間で揺れていた二人が、長い物語の終着点としてここに辿り着いたことに、胸がいっぱいになりました。
最終巻では、正義の事故をきっかけにオールキャストが登場。こんなに取り乱すリチャードはシリーズ史上初めてでした。しかもペットボトルのロイヤルミルクティーを飲むなんて…!!
みのるくんはパニックになったリチャードに、どう寄り添うべきなのか一生懸命考えます。すっごく良い子なんですよね。彼のまっすぐな優しさに正義もリチャードも救われているんですね。
懐かしいキャラクターも勢揃いし、「本当に終わるんだ……」と実感させられる、胸に刺さる名場面でした。
この作品が教えてくれたこと
『宝石商リチャード氏の謎鑑定』は、差別や偏見、そして「当たり前」とされる価値観と静かに向き合う物語でした。
リチャードに向けられる「美しさへの羨望」が、ハラスメントとして描かれる場面は強烈です。
相手を傷つけるつもりがなくても、誰かにとっては刃になってしまう――。
そんな現実を丁寧に描いていました。
無意識のうちに押しつけてしまう「普通」という価値観。
「多様性」という言葉の便利さと、その裏側にある本当の寄り添い方の難しさ。
自分の中にもある無自覚な偏見や、誰かを傷つけうる刃に気づかせてくれた、大切な作品です。
10年一緒に歩んだ時間
2015年から2025年までの10年間。
正義くんたちとともに、私自身も少し成長したように感じています。
物語としては終わってしまったけれど、彼らの人生はこの先も続いていく——。
現実でもこういう別れ方ができたらいいのにな。
「いつかまた会えるかも」「元気にやってるかな」と思える終わり方って、すごく素敵ですよね。
でも実際は親しい人ほど、寂しい別れが訪れてしまう。完結に際して少し感傷的になってしまいました。
さてさて、辻村先生、10年間本当にお疲れさまでした。また先生の新しい物語を読める日を楽しみにしています。
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