『営繕かるかや怪異譚』『十二国記』『残穢』などホラーやミステリー、ファンタジージャンルで活躍する作家の小野不由美さん。
小野不由美さんは、日本のファンタジー文学界で不動の地位を築いた作家であり、その豊かな想像力と緻密なストーリーテリングで読者を魅了し続けています。
この記事では、彼女のデビュー作から最新作までの小説を振り返り、初見の方やファンの方にも読んでほしい小野不由美作品の魅力をご紹介します。
- デビュー作から最新作まで小野不由美作品をご紹介
- 次に読みたいホラーやミステリー小説が見つかる
- 『十二国記』や『屍鬼』などのアニメ原作がわかる
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作家・小野不由美とは?
小野不由美(おの ふゆみ)さんは、日本の作家で、主にファンタジーやホラーのジャンルで知られています。
1960年に大分県で生まれ、大分大学文学部仏教学科を卒業しました。彼女の学問的な背景から、仏教思想に深い造詣を持ち、その知識は『屍鬼』や『黒祠の島』などの作品に生かされています。
また、小野さんの実家は設計事務所を営んでおり、幼い頃から図面に親しんでいたことから、建築物にも強い興味を持っていました。この経験が、最新作『営繕かるかや怪異譚』における精緻な間取りの描写に結びついています。
小野不由美さんの夫は、ミステリー作家の綾辻行人さんで、代表作には『Another』や『十角館の殺人』があります。
彼女の作品はアニメ化や実写映画化、コミカライズ化されており、さまざまなメディアで広く親しまれています。
バースデイ・イブは眠れない
1988年に発売された小野先生のデビュー作品です。
訳あって劇団に入団した女子高生・夕香は、劇団内で巻き起こるさまざまなトラブルに巻き込まれていきます。彼女は探偵役として、次々と発生する事件の解決に挑むことになります。
小野不由美さんには珍しい恋愛ものですが、その後の著名な作品に触れてきたファンは、その内容の違いに驚くかもしれません。
小野さん自身も「恋愛ものは向いていない」と語るほど、この作品の執筆には苦心された様子がうかがえます。
一見、少女向けのライトな恋愛小説に見えますが、物語にはヤクザや死体が登場し、ティーン向け小説としては刺激が強い内容となっています。この作品には、後にホラージャンルで活躍する小野さんの片鱗が見られます。
なお、「悪霊シリーズ」(ゴーストハント)以前の作品は3作品とも絶版となっており、中古市場ではかなり高騰しています。そのため、入手は困難ですが、もし出会えたならラッキーな本です。ファンにとってはぜひ読んでおきたい一冊となっています。
メフィストとワルツ!
『バースデイ・イブは眠れない』の続編で、1988年に講談社X文庫ティーンズハートから発売されました。
続編では、劇団キャストの女子メンバーを狙う結婚詐欺師が現れます。
有香や万里たち劇団「キャスト」のメンバーは、この詐欺師をこらしめるために立ち上がり、巧妙な罠を仕掛けることにします。しかし、罠に嵌める作戦が成功したと思いきや、予期せぬ展開が待っているのです。
本当の詐欺師は誰でしょうか?
悪霊なんかこわくない
1989年に発売された小野不由美さんの3作目の作品です。
「悪霊」とタイトルに入っていますが、「悪霊シリーズ」(ゴーストハント)とは別のレーベルで出版されたものです。
この作品は「悪霊シリーズ」の原点とも言える物語。姉の嫁ぎ先に現れる幽霊を退治するストーリーが描かれています。
物語では、頭脳明晰で生意気な美少年・蓮と、快活な少女・杳(はるか)がタッグを組み、怪奇事件に挑んでいきます。このコンビは、「悪霊シリーズ」(ゴーストハント)のナルと麻衣を思わせるバディものです。
心霊現象に立ち向かいながら、その背後に隠されたミステリー要素の謎にも迫る展開は、「悪霊シリーズ」のプロトタイプと言えるでしょう。
現在では入手が難しくなっている本ですが、小野不由美さんのホラー作品が好きな方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
ゴーストハントシリーズ
「悪霊シリーズ」は、1989年から1992年まで「講談社X文庫ティーンズハート」から刊行されました。2010年から2011年には「ゴーストハント」シリーズと改題され、新装版が再刊されています。
このシリーズは、いなだ詩穂によるコミカライズ版やアニメ版も展開され、多くのメディアで親しまれました。シリーズは全7巻で構成され、続編として『悪夢の棲む家』上下巻も発表されています。
『ゴーストハント1 旧校舎怪談』(旧題:悪霊がいっぱい!?)
シリーズ1作目にして、始まりの物語。主人公・麻衣と渋谷サイキックリサーチ(SPR)の出会い。
主人公・谷山麻衣が通う高校には、いわくつきの旧校舎があります。この旧校舎は現在使用されておらず、解体工事を試みるたびに事故や事件が発生しています。
心霊現象の解決を試みるため、渋谷サイキックリサーチ(通称:SPR)が調査にやってきます。SPRの所長は17歳の青年・ナルで、美少年ながら愛想がなく、少々扱いづらい人物です。
麻衣は、事故によって助手に怪我を負わせてしまったことがきっかけで、ナルの助手としてSPRの調査を手伝うことになります。
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安國 愛菜がナレーションを担当しています。
続編『悪夢の棲む家』
『ゴーストハント』シリーズ完結後の続編。1994年に上下巻が刊行されました。
念願のマイホームを購入したOL・翠とその母・礼子。その家は改装されたばかりの一軒家で、相場よりも破格の値段で取引されていました。
最初は新しい生活に喜びを感じていた親子ですが、次第にいたずら電話や電気機器の故障、家鳴り、雨漏りなど、連続するトラブルに悩まされるようになります。
知人の紹介で依頼を受けたナルやSPRのメンバーが、事件解決に乗り出すことになります。
過ぎる十七の春
1990年に発売された『呪われた十七歳』が加筆修正され、新装版『過ぎる十七の春』として2023年に発売されました。
主人公の直樹と従兄弟の隆は、まもなく十七歳の誕生日を迎えます。2人の誕生日を祝うため、直樹と妹の典子は隆が住む「花の里」を訪れることになりました。
花に囲まれた美しい田舎町にも関わらず、普段は優しい隆の様子が最近おかしいのです。母親の美紀子に対して冷たい態度を取り、普段は見せない奇行を繰り返しています。
直樹は隆の不調の原因を調べ始めます。一方、隆は「あの女が、迎えに来る…」と警戒し、夜ごと現れる謎の女性の気配に怯えています。
母子に一体何があったのでしょうか?直樹と隆に迫る悲しい繋がりとは?
緑の我が家 Home, Green Home
1990年に発売された『グリーンホームの亡霊たち』が改題され、新装版『緑の我が家 Home, Green Home』として再発売されました。
高校生の荒川浩志は、父の再婚を機に書店街の一角にある「ハイツ・グリーンホーム」で一人暮らしを始めます。このアパートは地元で有名な心霊スポットで、帰るたびにひどく不快な気分に襲われます。
引っ越し初日、郵便受けに首が取れかけの人形が入っていたり、不愉快な隣人にアパートを退去するよう勧められたりと、始まりから幸先が悪いです。隣人の真意とは?幽霊を信じない浩志でさえも感じる不快な気分の正体と、このアパートに隠された秘密とは?
十二国記シリーズ
小野不由美先生の代表作である異世界ファンタジー小説シリーズです。
物語の舞台は、12人の王が統べる12の国が存在する架空の異世界で、不老不死の神仙や妖魔が共存しています。この世界は地球と地続きですが、隔絶された場所にあります。
シリーズは同じ世界設定を共有しつつ、各巻ごとに異なる登場人物や国が中心となり、時代設定も前後します。
現在もシリーズは完結しておらず、多くのファンが続編を待ち望んでいます。
2002年にはNHKでアニメ版が放送され、シリーズの5作目『風の万里 黎明の空』までがアニメオリジナル要素を加えながら映像化されました。
シリーズの1作目『魔性の子』はホラー小説で、本編の外伝にあたります。この作品は、第1巻『月の影 影の海』の前の出来事を描いています。
『魔性の子』は、異世界ではなく現代の日本を舞台にしています。
小野不由美さんがこの作品を書き上げた当時、続編を書く予定はありませんでした。しかし、綿密に作り込まれた異世界設定が編集者の目に留まり、その結果、作品のシリーズ化に至りました。
物語は、母校である私立男子高校に教育実習に訪れた広瀬が、不思議な雰囲気を持つ高里要と出会うところから始まります。広瀬は、高里が幼少期に神隠しにあい、それ以来彼に関わると祟りがあるという噂を聞きました。
半信半疑の広瀬の前に、実際に高里を中心にした奇怪な事件が次々と起き始めます。
高校では祟りだと恐る者、崇めるものが現れ、次第にパニックが広がっていきます。
『週刊少年ジャンプ』の人気マンガ『呪術廻戦』の原点である『呪術廻戦0』は、実は小野不由美の『魔性の子』をオマージュしていると噂されています。
『呪術廻戦0』の主人公・乙骨憂太と彼を守る呪霊・リカは、『魔性の子』の高里と彼を守る2匹の妖の組み合わせと非常に似ています。
また、『呪術廻戦0』の第1話のタイトルも「呪われた子」で、芥見先生が小野不由美作品に対するリスペクトを示していることが伺えます。
気になる方は、ぜひ『呪術廻戦』と「十二国記」シリーズを合わせてお楽しみください。
『十二国記』シリーズの2作目でありながら、本編1作目にあたる作品です。
日本の女子高生・中嶋陽子は、毎夜見る悪夢に悩まされていました。夢の中で怪物たちが次第に近づいてきているのです。
ある日、「ケイキ」と名乗る金髪の美しい青年が陽子の前に現れます。ケイキは陽子を「主」と呼び、盟約を結ぶように強要します。混乱する陽子の前に、空飛ぶ獣が現れ、2人を襲います。
獣との戦いを何とか切り抜けた陽子は、ケイキとその仲間たちに誘われて異世界へと旅立ちます。
『十二国記』30周年を記念して発売されたガイドブックです。本書では、シリーズの歴史や作品を振り返ります。
人気マンガ家やイラストレーターによる書き下ろしイラストを掲載!
- 『呪術廻戦』の芥見下下先生
- 『涼宮ハルヒの憂鬱』のいとうのいぢ先生
- 『ハチミツとクローバー』の羽海野チカ先生
などなど。
また、以前ドラマCDの付録として収録されていた短編『漂舶』も掲載されています。『漂舶』は、作品『東の海神 西の滄海』の後日譚を描いたものです。
東亰異聞
本作は1994年に新潮社から発刊された、ファンタジー要素を含む推理小説です。
舞台は明治時代の東京に似たパラレルワールドの町、帝都「東亰」。文明開花が進み、街には街灯が設置され始めますが、夜になるとまだまだ魑魅魍魎が跋扈する世界です。
物語は「闇御前」と呼ばれる人ならざる者が引き起こした連続殺人事件から始まります。新聞記者の平河新太郎は、この事件の唯一の生き残りである青年・常を調べることになります。常は公爵家の現当主であり、その出生には秘密が隠されているようです。
幻想怪奇ファンタジーと本格ミステリが融合した、前時代の妖しさが漂う一作です。
屍鬼
本作は1998年に新潮社から上下巻で発売され、上下合わせて1000ページを超えるボリュームがあります。文庫版は全5巻に分かれています。
小野不由美さんは、あとがきで本作がスティーブン・キングの『呪われた町』へのオマージュであると語っています。
この作品は視点が入れ替わる群像劇で、登場人物が150人を超える超大作です。舞台は人口1300人の田舎町・外場村。古い因習が残る村社会で、土葬の習慣も残っています。
猛暑の夏、深い森の中にある集落で3体の腐乱死体が発見されると、村中で原因不明の不審死が連続して発生します。これが殺人なのか、流行病なのか、それとも別の何かなのか、村の住人たちはそれぞれ調査を始めます。その間にも、闇はジワジワと村を覆い尽くしていきます。
本作はアニメ化やコミカライズ化もされており、それぞれ異なる結末を迎えます。ぜひ、各バージョンを読み比べてみてください。
黒祠の島
本作は2001年に発売されたミステリー小説です。
探偵・式部剛は、九州北西部に位置する離島・夜叉島に調査に向かいました。これは、彼が懇意にしていた女性作家・葛木志保の行方が不明になったため、彼女の故郷で手がかりを探すためです。
夜叉島は古い因習と宗教が色濃く残る閉鎖的な村社会で、外部の人間に対して非常に懐疑的です。そのため、捜索は進展が見られません。
しかし、式部は村の医師・泰田と知り合い、彼の協力を得ることに成功します。すると、葛木志保が亡くなったと知らされます。死因は明らかに他殺であるにもかかわらず、村の住民たちは口をつぐみ、何かを隠している様子です。
葛木志保は本当に亡くなったのか?そして、誰が、何の目的で彼女を殺したのか…?
くらのかみ
『くらのかみ』は、2003年に講談社から発売された小説です。
物夏休みに本家の後継者を決めるために親戚一同が集まることになりました。この一族には、後継者が恵まれず幼いうちに命を落とすという古い逸話があります。
今回も本家の子どもが亡くなり、大人たちは、行者に祟られているのではないかと噂しています。
主人公の耕介を含む子どもたち5人が遊んでいると、いつの間にか1人増えて6人になっていました。どうやらその中に座敷童が紛れ込んでいるようです。
一方、大人たちは何者かによって食事に仕掛けられた毒で苦しみ始めます。次々と起こる事件と、一族に隠された秘密を子どもたちが謎解きしていく物語です。
鬼談百景
本作は、2012年に角川文庫からメディアファクトリーより発売されたホラー短編集です。
小野不由美さんは「悪霊シリーズ」の連載中に、読者からの心霊体験や怪奇現象の噂を募っていました。その集まった現代のホラー話を基にして、書かれたのが本作の百物語です。
しかし、本作は99話から構成されており、残りの1話は次に紹介する『残穢』が100話目に該当します。
また、99話の中から厳選された10話が映像化され、実写映画として公開されています。「本当にあった怖い話」や「耳袋」が好きな方にはおすすめのホラーショートドラマです。ぜひ、小説と合わせてご覧ください。
残穢
小野不由美さんの「悪霊シリーズ」では、あとがきにて、読者からのホラー体験を募るというユニークな試みが行われていました。心霊体験や怪奇事件の噂を集めることで、本作が生まれたのです。
この小説は、作家である「わたし」が受け取った1通のホラー郵便をもとに、あるマンションで発生する心霊現象を調査するドキュメンタリー形式で進行します。
マンションの住人や元住人、地域住民を対象にフィールドワークを重ね、心霊現象の原因となった事件や過去の出来事を追いかけていきます。
「穢れは建物に憑くのか、土地に憑くのか、それとも人に憑くのか?」というテーマが探求され、感染していく「穢れ」とその発端が描かれています。
リアルな描写が非常に印象的で、自分の近所にも似たようなマンションが存在するかもしれないと考えると、ゾッとします。
また、この作品は実写映画化もされているので、映画版もぜひチェックしてみてください。
営繕かるかや怪異譚シリーズ
2014年に角川書店から発売されたホラー短編小説をご紹介します。
この作品は、幽霊が出る事故物件をテーマにした群像劇で、毎回短編ごとに異なる主人公が登場し、それぞれの住居に現れる怪異に悩まされています。
そこに登場するのが営繕屋・尾端で、彼が家を修繕することで怪異の障(さわり)を取り除きます。
「営繕」とは、建物の老朽化や損傷に対応するための修理、改修、保守点検を指します。
本作では、家に憑いた穢れの元を修繕し、残りのものは次に引き継ぐという考え方が描かれています。
怪異を退治するのではなく、共生していく方法に着目しており、幽霊は無くなるのではなく、共に家に残り続けます。
これは古い家を引き継ぐことと同義であり、人間の営みで培われてきた良い面も悪い面も含めて次の世代に繋いでいくという理念が反映されています。
現在、シリーズは3作(2024年9月現在)が発売されています。
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怪談えほん (10) はこ (怪談えほん10)
2015年に発売された小野不由美さんのホラー絵本をご紹介します。イラストはnakabanさんが担当し、編集はホラー小説雑誌の編集長である東雅夫さんが手がけました。
この絵本は「怪談えほんシリーズ」の第2弾として制作された10冊目の作品です。シリーズは、幼少期から怪談に触れることで子どもたちに不安や恐怖への対処法を学ばせ、想像力を養うことを目的としています。
本作では、ペットや物が「はこ」に入れると次々に消えてしまうという物語が描かれています。
女の子は不思議な音がするはこの中身と、消えていくものたちに思いを馳せます。
喪失感と寂しさが漂うこの作品は、ジワジワと首を締められるような不安を与え、大人にとってもトラウマ級の一冊です。
小野不由美のホラーな世界を体感しよう
小野不由美の小説は、時を超えて多くの読者を惹きつけてきました。
彼女のデビュー作から最新作までを通じて、彼女が描く精緻な物語や深いキャラクターたちの成長を感じることができます。
『十二国記』『ゴーストハント』『屍鬼』はアニメ化、『残穢』『鬼談百景』は実写映画化されています。
小説で原作を楽しんだあとは、ぜひアニメや映画と見比べるのもおすすめです。
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